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TAKESHIS’
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前作『座頭市』でエンターテイメントに徹した北野武監督が次に手掛けた『TAKESHIS’』は、北野武監督曰く「100人の評論家が見て、7人しか分からない」難解な映画になりました。

監督の思惑どおりと言ってしまうと少し悲しいのですが、この映画を観た多くの人は「よく分からなかった」のではないでしょうか。

そこで今回は、この映画が「よく分からなかった」理由を、いくつかのキーワードから探ってみたいと思います。


フラクタル
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Wikipediaによると、映画のアイデアは自身が監督を務めた『ソナチネ』の頃から温めていたらしく、仮タイトルは『フラクタル』で、タクシー運転手を主人公とした映画にするつもりだったとか。

日本映画専門チャンネル『北野武劇場』で、たけし軍団の水道橋博士は、『フラクタル』の構想段階で、二枚の模造紙に現実と夢が多層構造に書かれている脚本を見た話をされていましたが、出演者の理解が追いついていない様子が印象的でした。

ちなみに『フラクタル』とは幾何学上の概念だそうで、Wikipediaで調べてみるも、難しくてよく分からず・・・。

Wikipedia:フラクタル


8 1/2
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映画監督が主人公で、現実と虚構の世界が交錯する『TAKESHIS’』は、フェデリコ・フェリーニ監督の『8 1/2(はっか にぶんのいち)』がしばし引き合いに出されます。

Wikipedia:8 1/2

北野武監督は著書の『仁義なき映画論』で『8 1/2』をベタ褒めしており、こんな興味深いコメントも残しています。

ーいろいろあったけど、とりあえず最後はお祭りでワイワイやろうとか、結構恥ずかしいことを撮っちゃうんだから、ノリがいいよ。監督北野として撮れば、フェリーニ自身を出しちゃうね。マストロヤンニに演技指導しているところまでいったほうがいい。そういう手もあるってこと。ゲーム性をさらに高められるじゃない。

北野武監督、『TAKESHIS’』で自分を出しちゃいましたね。


森プロデューサーの苦悩
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いくら前作の『座頭市』で成功を収めたとはいえ、難解な『TAKESHIS’』を撮ることにゴーサインを出した森プロデューサー。

本作撮影時、北野武監督は体や精神の不調を訴えていたといいます。しかし、次のステップに進むためこの映画を撮ることが必要なのだと、本作のプロデューサー・森昌行氏は考えていたようです。

日本映画専門チャンネル『北野武劇場』で、森プロデューサーはこのように語っています。

「内にむかって自分を否定することになろうとも、次のステップに行くためには、通過しなくてはいけない壁で、これを突き破らなくてはいけないんじゃないかと。だからこれを解決するには、この作品を完成するしかないという考えに私自身も変わっていったのですね」

「でも、くぐり抜けるかと思ったら、くぐり抜けなかったッスね」


よく分からなかった・その1 ラーメン屋
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全体的に難解で、「よく分からない」が連続する『TAKESHIS’』の中でも、個人的によく分からなかったのが、ラーメン屋とタクシーのくだりです。

どちらのシーンも北野武監督が見た夢だそうで、著書の『物語』で、これらの夢について語っています。

昔、売れてない頃ね、ラーメン屋の生意気なオヤジがいてね。うるせえオヤジで、「コショウ入れんじゃねぇ!」とか言ってんだ。それ食って、「イヤな野郎だ。二度とあんな店行かねえ!」と思って。で、しばらくしてね、カップラーメン食うのよ。ほいで寝ちゃうんだけど、喉カラカラに渇くんだ。喉乾いてるの、現実は。で、夢ん中では、そのオヤジが水くんないんだよ。


よく分からなかった・その2 タクシー
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ー俺、ちょっと運転手やってたじゃない?そんな何カ月もやってないけど、ただ、あの頃、好景気で、いろいろな客を乗せたっていうのがあって、やっぱりタクシーの運転手の夢、見るんだよね。よくわかんないオカマを乗せちゃう夢とかさ。


北野武監督の不調
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フェデリコ・フェリーニ監督も意識しながら、現実と虚構が交錯する難解な世界に取り組んだ『TAKESHIS’』ですが、難解な映画を観た時のそれとは別の次元で「よく分からない」印象を受けてしまったのは、私だけでしょうか。

『TAKESHIS’』や『監督・ばんざい!』って、結構ぐじゃぐじゃしてた時期でさ。映画以前に、自分自身の年齢とか、身体とかのこともあるから。だから青年期ってのがあって、青年からおじさんになる時期があって脱皮するじゃない。で、これも、やっぱり脱皮の時期だよね、オヤジからジジイになる。そのときがいちばんこう、ぐじゃぐじゃしてるよね。

もしかして、更年期による不調だった・・・!?


作品情報
・公開:2005年 オフィス北野/松竹
・監督、脚本:北野武
・撮影:柳島克己
・音楽:NAGI 掛川陽介、藤川祥虎
・美術:磯田典宏
関連リンク
Wikipedia:TAKESHIS'
Amazon.co.jp:『物語』北野武(著)
Amazon.co.jp:『仁義なき映画論 (文春文庫) 』ビートたけし (著)

by tokephone | 2016-07-18 20:43 | 北野武
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